ネットショップ開業前に知っておきたい基礎知識

ネットショプの開業を計画している企業、個人事業主の皆様に、開業に必要な基礎知識を初心者向けに説明をしています。

こちらからPDFでもお読みいただけます。

1. 目的と基本戦略の設定

何を目的にネットショップを開くのかを明確にしておくことが第一歩となります。
目的により店舗のあり方・戦略の方向性が異なるからです。
大きく次のように分類されます。

通販事業の位置付けポイント目標設定と戦略パターン施策注意事項
通販特化
通販事業だけでゼロから利益の拡大を目指す。
商品や価格の優位性が成功の必須条件となる。 また、商品カテゴリーの認知度も前提として重要。新規客獲得優先
プロモーションで集客を行い、長期的な視野でまず一年後に単月黒字化を目指す。
モールへの出店で、短期間に集客力アップ。 モール内SEOで知名度を獲得する。広告投資額が大きくなり、その回収には長い日数を要する。最初に長期計画を持つことが重要。
「趣味的」に通販事業にトライア。
コストをかけず、できるだけ短期間で採算ベースに乗せる。
出店料金がかかるため、モールではなく独自店舗で運営。 広告よりもPRや口コミで集客。固定時を削ってできる範囲での運営になり、事業は先細りになりやすい。どこかの時点で拡大志向への転換が必要。
実店舗併用型
実店舗を運営していて、その延長線上で通販事業を展開し、利益を獲得する。
実店舗での顧客の情報や協力の有無が通販事業の成功を左右する。 店舗顧客とのコミュニケーションが取れていると、通販にそのノウハウが活かせる。顧客拡大志向
実店舗でカバーできない地域・時間帯の新規客獲得。
クチコミPRだけでなく、モールへの出店や広告も検討すべき。 実店舗があることでの信頼感は、.通販では大きなアドバンテージ。実店舗の顧客を分析して、ターゲティングをしっかりできれば、通販での新規獲得も容易になる。モールであればベース顧客があるので拡大が楽。顧客の分析が大変重要。
現在顧客中心型
実店舗の現在顧客をメディアとして利用し、口コミや評価などで新規客を徐々に広げてゆく。
現顧客の利便性を高め顧客満足度を上げることで、新規客の紹介、顧客の広告PRへの活用などを展開してゆく。顧客と一緒に通販を育て伸ばすというイメージ。店舗客の協力度が事業を左右。ネットワークビジネスと割り切って、地道に長期視点で事業を捉えることが必要。短期間で成果が出なければ方針転換が必要。

2. 商品

商品の差別的優位性

ネット販売の成否は、商品の優位性、差別性が決めると言っても過言ではありません。

インターネットという「検索フリー」の世界では、あらゆる「ニーズ」が存在します。自分が持つニーズを満たしている商品があればお金を出して買いたい、という「潜在顧客」は必ずネット上にいます。

潜在顧客を顕在化する有力な要素が商品の「差別的優位性」です。差別性のある商品だけが、インターネットの世界で無料で利用できる「検索」ツールを広告として活用できるのです。

「差別的優位性」により購買客に独自のメリットや満足感を提供できるのであれば、それを販売サイトで訴求するだけでお客様は自然と集まります。ですので、ネットショップを始めるのであれば、商品の「差別的優位性」にとことんこだわってください。

そして、その優位点を的確にターゲットに伝えるためのコピーや写真、動画の制作に注力してください。ここが一番の勝負所となります。

商品にこだわれば、後でのべるマーケティング・コストがずっと安く済みますので、事業の黒字化も早期に実現します。

フロントエンド商品とバックエンド商品

お客様視点で、「買いやすい商品」と「買いにくい商品」を区別します。

お店を代表する商品、お客様が優位性を最も感じてくれる商品を、買いやすい価格、形態にして「フロント商品」として位置付けます。

そしてまず、新規客にはこのフロント商品を買っていただけるようプロモーションを仕組みます。

「バックエンド商品」は、お店がお客様に最も買っていただきたい商品です。もちろんお客様に商品から得られるメリットを最も享受できる商品でなければなりません。

そして「フロンドエンド商品」をご購入いただいたお客様に、この「バックエンド商品」を買っていただく工夫をマーケティングに仕込んでおきます。お客様にまず「フロントエンド商品」、次に「バックエンド商品」をご購入いただくという「カスタマージャーニー」を体験していただくことで、顧客の固定化を目指します。

新規客とリピーター

ネットショップのお客様は、「新規ユーザー(初めての購買客)」と「リピーター(すでに購買履歴のあるお客様)」に分けることができます。

ネットショップ開店当初は、お客様は「新規客」ばかりになりますが、そのうちにリピーターが出現するようになります。

ネットショップの経営では、この2つのグループに対して別々にマーケティングをすることと、それぞれの比率を最適なところで維持することが大変重要となります。

一般的に、新規客の獲得コストはリピーターの5倍かかる、と言われています。

開店当初はどうしても新規客の数に目がいってしまいますが、リピーターを育成してゆくことがネットショップの経営の柱になる、と考えてください。

そのためにはリピーターを生みやすい商品を用意することが大変大切です。その典型的な商品が定期購買型の商品です。

「フロントエンド商品」→「バックエンド商品」→「定期購買商品」 とお客様を「引き上げる」ことを考えて商品を配置しましょう。上位に行くほどお客様にメリットを提供する仕組みが鍵となります。

全体の顧客数の80%がリピーターとなるとネットショップの年間利益は最大となる、と言われています。ネットショップの顧客構成比の理想型としてこれを目指しましょう。

3. 販売サイト(店舗)

モール・カート

店舗をどこに出すのかは重要な問題です。
大きくはモールに出店するか、独自店舗(カート)で出店するかの選択になります。

さらにそれぞれのモールやカートにより、利用できる機能が異なります。

店舗立地特徴メリットディメリット
モール
楽天市場 Amazon Yahoo!ショッピング au Payマーケット Qoo10
など
モールとしてポイントなどで囲い込まれた大量の顧客会員を持っているので、集客が容易になる。楽天に代表されるテナント型モールとAmazonに代表されるマーケットプレイス型モールに区別される。 また特定のカテゴリーに特化した専門モールなども出現している。開店当初からある程度の集客が見込まれる。 必要なツール、サポート体制が揃っている。 知識がなくても比較的簡単にショップの構築が可能。ランニングコストが高い。 モール内での競争が激しく、広告やメルマガなどマーケティングコストがかかる。また、価格競争に巻き込まれやすい。 顧客=モールの顧客で、顧客情報を集めにくい。 システムや規則の制約があり、独自色が出しにくい。
単独店舗(ショッピングカートシステム)独自のスタイルで店舗が構築できるのが、カートシステムの最大の魅力。そのため作りたい店舗に適したカートシステムの線悪が重要となる。 サイト全体を構築できるECサイトパッケージと、買い物かごの機能だけを提供するASPカートに分類でき、商品、ブランディング、サイト構築スキルに合わせて選ぶことができる。ブランディングができることが最大の魅力。自由な情報発信やマーケティングができる。 顧客と直接繋がれることができるので、顧客の囲い込み策の実施が容易。そのためのツールも用意されたカートがある。 SNSや既存ブログサイトなどとの連携も容易で、制約もないがあればそれを利用できる。 月額利用料無料で始められるサービスもある。
ある程度のHTMLやデザインの知識経験が必要なシステムが多い。自由度が大きい分だけ、サイト構築の知識技術が必要。 集客プランを独自に実施する必要がある。モールより集客コストが高くつく。 システム、サポート品質の安定性に不安なサービスも多い。

主要なモール

名前会員数特徴出店コスト情報提供サイト
楽天市場1億1980アカウント圧倒的な集客力。 ネット販売のために必要なシステムを全て提供。 サポート体制が充実。スタンダードプラン 月額50、00円 + 売上の2~4.5%https://www.rakuten.co.jp/ec/
Amazonプライム会員数 2億人(全世界) 月間ユニークユーザー数 4306万人(モバイル)簡単な出店(出品)。 圧倒的な集客力。 販売の全てをAmazonに委託することも可能(FBA)。月額 4,900円 + 販売手数料https://sell.amazon.co.jp/learn/beginners-guide?ref_=sdjp_learn_bg_n
Yahoo!ショッピング月間訪問者数 8000万人Yahoo!、LINE、paypayなどからの集客が可能。 開店費用、基本0円
月額基本料金 0円 ロイヤリティ 無料
https://business-ec.yahoo.co.jp/shopping/
au Payマーケットauユーザー2500万人を誘導30〜40代のスマホユーザーが中心。 auポイントを利用した購買が圧倒的多数。 中国市場への越境ECも可能。成約手数料4.5%~9%https://wowma.shop/
Qoo1011750万人eBayが展開するECモール。 出店に最短3日間 スマホユーザーが9割。
月額固定費無料 販売手数料 7〜12%https://www.qoo10.jp/gmkt.inc/Mobile/Company/jp/GuideDefault.aspx

主要なショッピングカート

カート名特徴料金(代表的なプランを表記)
BASE https://thebase.in/無料でネットショップが開設できる、人気のカートサービス。150万店舗を突破。 デザイン性に優れたショップが簡単に開ける。初期費用月額利用料無料
Shopify https://www.shopify.jp/デザイン性と拡張性に優れたグローバルで定番となっているカートシステム。 既存のサイトやSNSにカート機能位が定額で導入できる。(hopify Lite)月額基本料金 29$ Shopify Lite  月額9$

Color Me https://shop-pro.jp/低価格と簡易なシステムで人気のASPカート。 スモールスタートを目指す店舗に人気。 テンプレートが多数用意されていて、選ぶだけでショップが開業できる。初期費用・月額費用 0円
MakeShop https://www.makeshop.jp/多数の導入実績を誇るASPカート。 低料金も人気の要因。コストパフォーマンスがとても良い。 スモールビジネスから大手企業までユーザーの幅は広い。初期費用 11,000円 月額料金 11,000円
furuteshop https://www.future-shop.jp/高機能でかつ拡張性に優れた、老舗のASPカート。 サポート体制がしっかりしていて、新しいサービスを積極的に取り入れている。 ブランドサイトおよびECサイトとして利用する企業が多い。初期費用 22,000円 月額料金 132,000円
EC-CUBE https://www.ec-cube.net/オリジナリティの高いショップが構築できる、代表的なECサイトパッケージ。 ダウンロード版は基本的な機能が全て無料で利用できる。 クラウド版はスモールスタートの最適なプランとして人気。 拡張性に優れ、多様なサービスベンダーが店舗運営をサポートしている。クラウド版 月額 6800円から
サイト制作

サイト制作について、全てを制作会社に依頼するのはやめた方が無難です。

その理由はいくつかありますが、まず、ほとんどのカートシステムは、販売ページ用のテンプレートを用意しています。HTMLやCSSが初心者でも素材さえあれば簡単にページを作ることができます。

また、HTML、CSS、画像処理はネットショップ運営には最低限必要なスキルです。これを機会に勉強をされることをお勧めします。本を1冊買って覚えれば十分です。

さらに、商品のコピーや説明文は是非ご自分で書いてみることもお勧めします。商品を一番よく知っているのはショップオーナーです。コピーライターでなくても丁寧に書けば商品の良さ、メリットは伝わります。

しかし、次の作業は予算が許すのならプロに任せるのが得策です。

写真撮影・画像作成・動画制作

写真や画像のクオリティは、商品の販売に大きく寄与する重要な要素です。

この作業はプロに任せたほうが良い結果に結びつきます。

ランディングページの作成

フロントエンド商品のランディングページは、プロに任せましょう。

このページがお店の生命線をだと思ってください。写真、画像、コピー、デザインの全てにクオリティを求めましょう。

また、SEO対策の面からもプロに助言を求めるべきです。

制作会社の選択は大変難しい問題です。

コスト、実績、規模、スピードなどいろいろな要素を検討しますが、「相談のしやすさ」が大切だと思います。

仕上がりの満足度は、こちらが求めている結果やイメージをどのくらい制作側に伝えられるかに大きく左右されます。ただ、丸投げをすると決してイメージ通りのものが上がってきません。制作会社は相談のしやすさを最優先に選びましょう。

また、制作会社から「技を盗む」ことも大切です。

ECサイトでは、ページ制作もできる限り社内のリソースで賄うのが基本だと考えてください。最初はリソースがなくても、社内に制作のノウハウを育てることにこだわりましょう。


その他で重要な要素として、広告と販促があります。
SEOは以前よりも重要度は低くなりましたが、仕組みを理解しておくことはサイト更新の時に重要です。

インターネット通販は、常に進化しています。
日々の情報収集が欠かせませんので、アンテナを高く張りその効果と自社店舗との適性を見極める判断力を磨きましょう。